正弦定理と余弦定理 ― どちらを使うかは「わかっているもの」で決まる
三角形の辺や角を求める問題では、正弦定理と余弦定理のどちらを使うかで迷う人がたくさんいます。実は、使い分けは問題文で「何がわかっているか」を見るだけで決まります。この記事では2つの定理がなぜ成り立つのかを図で確かめ、使い分けの判断基準と三角形の面積の公式までを例題と練習問題でまとめます。
この記事の内容
1. 記号の約束
△ABCでは頂点Aの向かい側にある辺BCの長さを a とし、同じように辺CAを b、辺ABを c と書きます。角の大きさも、∠A を単に A と書くように頂点の文字だけで表すことが多いです。
大切なのは「同じ文字どうしが向かい合う」という点です。a と A、b と B、c と C がそれぞれペアになっています。正弦定理はこのペアの関係を、余弦定理は1つの角とそれをはさむ2辺の関係を表した式だと思っておくと、式の形が頭に入りやすくなります。
2. 正弦定理 ― 外接円とつながる定理
正弦定理は「辺とその向かいの角の sin の比が、どのペアでも同じ」という定理です。しかもその共通の値は、外接円の直径 2R に等しくなります。なぜ外接円が出てくるのか、Aが鋭角の場合で確かめてみましょう。
外接円の中心をOとし、Bを通る直径BDを引きます。同じ弧BCに対する円周角なので ∠BDC=∠A です。また、直径に対する円周角なので ∠BCD=90° です。直角三角形BCDで考えると、斜辺はBD=2R、角Dの対辺はBC=a なので
sin A = sin D = a/2R より a/sin A = 2R
となります。B や C についても同じ議論ができるので、3つの比がすべて 2R に等しいことがわかります。Aが直角や鈍角のときも、円に内接する四角形の性質などを使えば同じ結論になります。円周角の定理と三角比がここで結びつくわけです。
ポイント
正弦定理は「向かい合う辺と角のペア」が1組まるごとわかっているときに力を発揮します。外接円の半径 R が問題に出てきたら、まず正弦定理を思い出しましょう。
3. 余弦定理 ― 三平方の定理の拡張
余弦定理は、2辺とその間の角から残りの1辺を求める定理です。A=90°を代入すると cos 90°=0 なので a²=b²+c² となり、三平方の定理そのものになります。つまり余弦定理は、直角でない三角形にも使えるように三平方の定理を広げたものです。
成り立つ理由を、頂点Aから辺BCに垂線AHを下ろして確かめます。ここではCの角に注目した c²=a²+b²−2ab cos C の形で考えます。
直角三角形AHCで、斜辺は b なので AH=b sin C、CH=b cos C です。すると BH=a−b cos C となります。直角三角形ABHに三平方の定理を使うと
c² = (a − b cos C)² + (b sin C)²
= a² − 2ab cos C + b²(cos²C + sin²C)
= a² + b² − 2ab cos C
最後に sin²C+cos²C=1 を使っているのがポイントです。三角比の相互関係が、ここでしっかり役に立っています。Cが鈍角のときは H が辺BCの延長上に来ますが、cos C が負になることで式は同じ形のまま成り立ちます。
余弦定理は形を変えると、3辺から角を求める式にもなります。
この式の分子の符号を見ると、角Aが鋭角か鈍角かがわかります。b²+c²>a² なら鋭角、等しければ直角、小さければ鈍角です。三角形の形を判定する問題でよく使われます。
4. 使い分けの判断基準
迷ったときは、問題文でわかっている量に印をつけてから、次の表に当てはめてください。
| わかっているもの | 使う定理 |
|---|---|
| 1辺と2角(向かい合うペアがそろう) | 正弦定理 |
| 外接円の半径 R が関わる | 正弦定理 |
| 2辺とその間の角 | 余弦定理(残りの辺を求める) |
| 3辺 | 余弦定理(cos の形で角を求める) |
| 2辺と、間でない角 | どちらも使えるが、解が2つある場合に注意 |
判断のコツは「向かい合うペアが1組そろっているか」です。そろっていれば正弦定理、そろっていなければ余弦定理と考えると、ほとんどの問題で迷わなくなります。1辺と2角の場合は、内角の和が180°であることから3つ目の角もわかるので、必ずペアが作れます。
表の最後の「2辺と、間でない角」だけは特別です。このときは条件に合う三角形が2つできることがあります。下の図は、b=2、A=30°、a=√2 の場合です。点Cを中心に半径√2の円を描くと、Aから伸ばした直線と2点 B₁、B₂ で交わります。
△CB₁B₂ は CB₁=CB₂ の二等辺三角形なので、底角はどちらも45°です。だから B₂ での角は45°、B₁ での角はその補角の135°になります。sin 45°=sin 135° なので、正弦定理だけを見ていると片方を見落としてしまいます。図を描けば、2つの解がある理由がひと目でわかります。
5. 三角形の面積 S=1/2·ab·sin C
余弦定理の証明で使った図をもう一度見てください。底辺を BC=a とすると、高さは AH=b sin C でした。三角形の面積は「底辺×高さ÷2」なので、そのまま S=1/2·a·b sin C になります。新しい公式というより、高さを三角比で表しただけです。
この公式は、余弦定理と組み合わせて使うことがとても多いです。3辺だけがわかっている三角形でも、まず余弦定理で cos を求め、相互関係で sin に直せば面積が出せます。共通テストでは「辺の長さ → cos → sin → 面積 → 内接円の半径」のように、1つの三角形について順番に求めていく誘導がよく見られます。
6. 例題
例題1:正弦定理
△ABCで b=4、B=45°、C=60° のとき、c と外接円の半径 R を求めなさい。
考え方:b と B のペアがそろっているので正弦定理を使います。
b/sin B=c/sin C より、c=4×sin 60°/sin 45°=4×(√3/2)÷(√2/2)=4√3/√2=2√6。
2R=b/sin B=4÷(√2/2)=4√2 より、R=2√2。
例題2:余弦定理と面積
△ABCで b=3、c=5、A=120° のとき、a と△ABCの面積 S を求めなさい。
考え方:2辺とその間の角がわかっているので、余弦定理で a を求めます。面積も同じ2辺と間の角で求められます。
a²=3²+5²−2×3×5×cos 120°=9+25−30×(−1/2)=49。a>0 より a=7。
S=1/2×3×5×sin 120°=1/2×15×√3/2=15√3/4
例題2で cos 120° の符号を間違えると a²=19 となり、まったく違う答えになります。鈍角では「−2bc cos A」の部分がプラスに変わり、向かいの辺が長くなると覚えておくと検算にも使えます。
7. よくあるつまずき
つまずき1:辺と角のペアを取り違える
a の向かいは A です。問題文に「AB=5」とあれば、それは c の長さです。図を描いて、頂点の文字とその向かいの辺に同じ色で印をつけると、ペアの取り違えを防げます。
つまずき2:2辺と間でない角から、角を1つに決めてしまう
上の図の a=√2、b=2、A=30° の場合は、正弦定理で sin B=√2/2 となります。B は45°と135°の2通りが考えられ、どちらも A と足して180°未満なので三角形は2つ存在します。sin から角を求めたら、鈍角の可能性を必ず確かめましょう。
つまずき3:「−2bc cos A」のマイナスを忘れる
余弦定理は三平方の定理に「補正の項」を足したものです。補正の項は −2bc cos A で、A が鋭角なら全体を小さく、鈍角なら大きくします。A=90°で補正がゼロになることを思い出せば、式の形を確認できます。
8. 練習問題(解答つき)
問1 △ABCで a=5、A=30°、B=45° のとき、b と外接円の半径 R を求めなさい。
解答を見る
正弦定理より b=a sin B/sin A=5×(√2/2)÷(1/2)=5√2。
2R=a/sin A=5÷(1/2)=10 より R=5。
問2 △ABCで a=7、b=3、c=8 のとき、角Aの大きさと△ABCの面積を求めなさい。
解答を見る
cos A=(b²+c²−a²)/2bc=(9+64−49)/48=24/48=1/2 より A=60°。
面積は 1/2×3×8×sin 60°=12×√3/2=6√3。
問3 3辺の長さが 5、6、7 の三角形の面積を求めなさい。
解答を見る
長さ7の辺の向かいの角をθとすると、cos θ=(5²+6²−7²)/(2×5×6)=12/60=1/5。
sin θ>0 なので sin θ=√(1−1/25)=√24/5=2√6/5。
面積は 1/2×5×6×2√6/5=6√6。
正弦定理・余弦定理を、入試形式で練習しよう
GeOriginの高校モード「GeOrigin Advance」では、単元学習を基礎・標準・応用の3段階で進められます。共通テスト形式の問題や、三角比と他の単元を組み合わせた融合問題、時間を計って解く模擬試験でも力試しができます。
無料でアプリを使ってみる →